「言葉は心に触れるもの…」 大人の会話には、隠れた刺が存在する。 その刺には、時には毒が塗られている。 その毒が相手によっては薬になり、あるいは麻薬や媚薬になり、 時には猛毒になってしまう。 大人の会話は、一歩間違えば危険な遊戯。 しかし大人は、刺を隠した言葉の応酬を楽しんでいる… あのパーティーの夜、軽い会話の中で私の放った一言に、 貴女は、その言葉の刺に触れてしまったか… そして、刺に塗られた毒に貴女はあたってしまわれたのか… 私は軽く言ったつもりなのに、貴女は私の言葉を受け止めて 隠れた言葉の刺は、どうやら貴女の心に深く刺さってしまったようだ。 私には無毒の毒だと思っていたが、貴女にとっては、猛毒だったのか… 以来、貴女の心は私の毒で凍りつき、私以外の人にも心を開かなくなった。 貴女のその寂しそうな目を思い出す度に、私の心も凍てつきそうになる… 私には、貴女の凍てついた心を溶かす術を知らない。 今はただ、貴女の心が溶解し、再び明るい笑顔を取り戻す事を、 …私は祈りつづけるしかない… さりげない、おとなの会話の中に潜む刺、 私は、まだ刺と毒とをうまく扱いきれずにいる。 そして、相手の毒を解毒する心の保護も十分ではない… 藤次郎正秀